ロバのシルベスターとまほうのこいし
せた ていじ 訳
「石」にとりつかれているようです。
不思議な「石」のお話です。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ロバのシルベスターの楽しみは、かわった形や色の小石を集めることでした。
ある夏休みの雨の日、シルベスターは奇妙な小石をみつけました。
燃えるように赤く光っていて、ビー玉のようにまん丸でした。
この小石をさわって 「雨がやんでくれたらなあ」というと、ぴたっと雨がやみました。
この石に魔法の力があると悟った シルベスターは
まず何をねがおうか とあれこれ考えながら いちご山を越えていくと、
むこうから おなかをすかせたライオンが現れます。
あまりにも あわてふためいた シルベスターは、
「ぼくは○○になりたい」と願って ○○になってしまいました。
そのために、シルベスターは二度と小石をさわることもできず、
おとうさん、おかあさんにも会えず、
じっと、そこにいなければなりませんでした。
誰に気づかれることもなく。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
さて、○○をあてて下さい。
という謎解きではありませんので、
続きです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ロバのシルベスターは、あんまり あわてて
「岩」になりたいといってしまったのです。
もとの自分に戻るチャンスは、ただひとつ。
誰かが あの赤い小石をみつけて、
岩よ、ロバになれ!
と願ってくれることです。
そんなことって あるでしょうか・・・
星が降るほどの夜になって
岩になったシルベスターは寝るよりほかにありません。
一方、家では、とうさんかあさんが、
よっぴて眠らずに、待っていました。
心配で心配で・・・
ふたりとも、かわいいむすこなしでは いられません。
近所にきいても、ともだちにきいても、警察にも
手がかりはありません。
村中の、犬という犬が いたるところを捜しましたが、
あの岩を 誰が シルベスターだと わかりましょうか。
もう、とうさんかあさんにできることは何もなくなり、
つらくて、暮らすはりあいも なくなります。
月日が流れて、やりきれないシルベスターは
いっそ岩になりきろうと思って、
眠って過ごすようになります。
秋がきて、木の葉が錦になり、
風がふきすさび 雪が降りました。
やがて、木々に若葉が萌え 花が明るく咲きました。
ある日、シルベスターの両親は
ピクニックに出かけます。
「かわいいシルベスターがいなくても、
気をとりなおして 楽しく暮らそう」 と。
そして、おくさんが あの岩に腰掛けました。
おかあさんのあたたかさで目を覚ましたシルベスターは
「ぼくだよ!ここにいるよ!」
と叫びたかったでしょう。
でも、岩ですから。
ものいわぬ岩ですから。
そして、おくさんがお弁当を並べているあいだ、
だんなさんは 散歩をして、
あの赤い小石をみつけます。
「変わった石だ。シルベスターが見たら、喜ぶだろうに。」
そういって、石を岩の上に置きました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ここまでくると、
あとひといき。
そうです。
シルベスターが「もとの僕になりたい。ホントの僕になりたい!」
って願えばいいのですから。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そして、魔法の小石は 鉄の金庫にしまわれました。
今のところ、のぞむことがありませんでした。
みんなの望みが すっかり 足りたのですから。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
































![: MOE (モエ) 2008年 04月号 [雑誌]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/61qzSI-K8BL._SL75_.jpg)





最近のコメント