午前中 降った雨も、午後からは上がった。
スペイン広場あたりで、解散し、
トレビの泉で、「もう一度 ローマに来られますように!」と後ろ向きにコインを投げ、ショッピングを楽しんだ。
そして、最後くらいは リストランテでフルコースを食べたい ということになった。
バルベリーニ広場の近く、歩きながら目につけていた 総ガラスのお店。
道に張り出す形で、何軒か並んでいる。
どうしようかな・・・とメニューをながめていた。
すると、目の青いカメリエーレ(ウェイター)が、その身も軽やかに 近づいてきた。
「ジャパニーズ?」
日本語のメニューもあるよっていうわけです。
ガイドブックによれば、日本人にはとても量が多いので、1つを2人で分けます といえば、ちゃんとはじめから お皿を2つにわけて出してくれます とある。
それで、ガイドブックにかいてある通りにイタリア語で言ってみた。
(ファッチャーモ・ア・メッツォ)
すると、「・・・・・・・ウォーター・・・・・・?」
とちんぷんかんな答えが返ってきた。
それで、「イエス、ノンガス」と適当に答えた。
初めに赤ワインと水を注文した後、行き詰まってしまった。
とにかく、1人前を半分に分けたかったのである。
さっきのカメリエーレは、飲み物を出した後、他のテーブルを回っている。
それで、今度は、岡田真澄を若くしたようなカメリエーレに、言ってみた。
「ワン フォー トゥー OK?」
そしたら、笑顔で、簡単に快諾してくれた。
「オー、ワン トゥギャザー!」
通じた!
それで、私たちは、前菜から生ハムとメロン、第1の皿からスパゲティ、 第2の皿からステーキ、付け合わせ野菜と、デザートからティラミスを選んだ。
良かった良かったと胸をなで下ろしていたら、まず、前菜がきた。
その時、岡田真澄似のカメリエーレがさわやかに言った。
「Enjoy!」 (さあ、楽しんで!)
お皿に大きなメロンが3つ。
この数から言って、2皿分ということはあるまい、ちゃんと通じた と思った。
それにしても、大きなメロン半分を3等分した感じ。
メロンが甘くて、生ハムの塩気と一緒に 口の中でとろける。
それにしても、これが1人前・・・?
次にスパゲティが2皿に分けて運ばれた。
麺は太め。味はいい。
そして、次の牛肉のステーキがきた時、急に不安になった。
お皿には、ジャイアントババのはく わらじ ほどもあるでっかいお肉が乗っている。
これで一人前はどう考えても大きすぎる。
舌鼓をうちながらも、これが一人前なのか、二人前なのか 考え考え 食べた。
でも、こんなにおいしいワインと雰囲気のあるリストランテ。
もう、そんなことは どうでもよくなった。
他をきりつめてきたんだから、ここではパァーッと行こう!
もう、二人前だって 食べてやる!!!
そう思って、最後のティラミスがやってきた。
黄色のお皿にのっている。
一番最初にきた青い目のカメリエーレが、腰をかがめ、そのティラミスを指でさしながら、
「・・・・・・・・ボルケーノ!・・・・」
「・・・・・・フジヤマ・・・・」
このティラミスは「イタリアのナントカ火山を形取っていて、日本でいうなら富士山だね!」
とでも いったようだった。わたしの想像力によると。
その人は、フジヤマのヤにアクセントを置き、その言葉を発する時、実に楽しげにチャーミングな目で語る。
思わず、こちらも笑ってしまう。
それで、カプチーノとエスプレッソを注文し、これまたとろけるようなティラミスを食べ、フルコースが終わった。
イタリア最後の夜に、こんな楽しいディナーにありつけるとは・・・
そして、お勘定。
回りをキョロキョロと見て、見よう見まねで、勘定する。
伝票には、一人前の値段がついていた。
やっぱり、通じてたんだ! (それでも 日本ならフルコース二人前の値段なんだけど)
サービス料もちゃんと含まれていたので、わたしの苦手なチップの心配もいらなかった。
わたしは、この チップ というもの、どうも スマートにできなくて 困る。
よかった。
帰るとき、青い目のカメリエーレが話しかけてきた。
「トウキョウ?オオサカ?ナゴヤ?・・・・」
知っている日本語をすべて並べようとしている。
わたしはすかさず言った。「ニア キョウト!」
すると、満足そうに知ってる知ってるとばかりに相づちを打って、
「・・・・・・・フジヤマ」(富士山の近くだね~)
・・・・・?
彼はフジヤマが大好きなようだった。
そして、最後に一番若い いけ面カメリエーレが「イタリアは初めて?」 ときいてきたので、そうだ といったら、握手の手をさしのべてきて、私たち二人は、彼と握手して、気持ちよく店を出た。
「グラッツェ!」
楽しかった~
おいしかった~
それにしても、彼らは、わたしたちを いくつだと思ってたんだろうなぁ。。。
何だか、子供扱いのように、親切にしてもらったけど・・・
そして、回りの人たちを見て思った。
私たちのように 律儀にフルコースで注文している人はいなかったのだ。
気軽にワインを飲みながら、食べたいものを自由に注文しているようだった。
それでいいんだ!
そして、何も一人 一人前を取らなきゃという 律儀な考えにとらわれることは、初めっからなかったんだ!
ここはイタリア。
楽しむことが 大事!